筋肉量と筋力、どちらがより寿命と関連するか|総死亡リスクのエビデンスまとめ

ダンベルが強調されている走筋道の紋章 筋論

今回は、
「健康目的の筋トレでは、筋肥大と筋力、どちらを優先すべきか?」
という問いに答えるため、
筋肉量と筋力、どちらがより寿命と関連するか
を調査してみた。

結論は以下となった。

「寿命への影響」という観点からは、筋肉量より筋力が優先されるが、筋肉も必要で、多いほど有利である可能性が高い

なぜ、そう言えるのか。
以下で、論文ベースで解説していく。

筋肉量と筋力どちらがより寿命と相関するのか?

まず確認しておきたいのが、やや古めではあるが、Newmanら(2006)[1]の論文である。

Newmanらは、2000人を超える70代の高齢者の、筋力(膝伸展筋力と握力)と筋肉量(大腿の筋断面積と四肢除脂肪量)とその後の死亡率の関連を調査した。

その結果は以下のようなものだった。

  • 筋力は死亡リスクと強く関連(膝伸展筋力は1標準偏差低下ごとに54%リスク増加)
  • 筋肉量と死亡リスクの有意な関連は、男性の大腿筋断面積にのみ認められた(1標準偏差低下ごとに26%リスク増加)

そしてこの論文のタイトルには、
Strength, But Not Muscle Mass, Is Associated With Mortality(筋肉量ではなく筋力が死亡率と関連した)」
と冠されている。

そして、この傾向はLiら(2018年)[2]の研究でも確認されている。

Liらは、米国の50歳以上の高齢者4400人超えの膝伸展筋力と筋肉量(四肢除脂肪量)の低下が全死亡リスクに及ぼす影響を調べた。

その結果は以下のようなものだった。

  • 低筋力は独立して死亡リスクと強く関連(134%増加)
  • 筋肉量は正常だが低筋力→死亡リスクが有意に増加(100%以上)
  • 筋力は正常だが低筋肉量→死亡リスクの有意な増加なし

LMM = 低筋肉量、LMS = 低筋力

Li R, et al. (2018). Associations of Muscle Mass and Strength with All-Cause Mortality among US Older Adults.より引用

ということで、こちらも、
寿命とは筋力が筋肉量より強く関連する
といった結論であった。

では、筋肉は要らないのだろうか?

筋肉は無駄なのか?

結論からいうと、筋肉もやはり大事ではあるようだ。

Zhouら(2023)[3]の49の先行研究、合計約88万人を対象としたメタ解析によれば、

  • 筋力と独立して、低筋肉量が死亡リスクの上昇と相関する(筋力が高くても死亡リスク19%増加)
  • 上腕周囲径が太いほど死亡リスクが低下した

とのことであった。

より新しい、Liら(2025)[4]の、
中高年および高齢者の筋肉量(除脂肪量)と死亡リスクの相関を、厳選した11件の研究、合計約13万人からの分析も、

  • 筋肉量が1kg増加するごとに死亡リスクが1%減少した

としている。

Lean mass = 除脂肪量

Li J, et al. (2025). Low lean mass and all-cause mortality risk in the middle-aged and older population: a dose-response meta-analysis of prospective cohort studies.より引用

したがって、筋肉も必要であり、多いほど有利である可能性が高い

さらにLiら(2025)は、

  • 低筋肉量は、死亡リスクを有意に増加させる(30%)が、この関係は75歳以上では有意ではなく、それ未満の年代で顕著(約40%上昇)であった

ともしている。
このことからは、筋肉の寿命へのポジティブな効果はじわじわ効いてくるタイプであり、早めの「貯筋」が重要と考えられる。

結語

今回は、筋肉量と筋力、寿命の観点からはどちらが重要なのかを調査してみた。

そして結論を確認しておくと、

「寿命への影響」という観点からは、筋肉量より筋力が優先されるが、筋肉も必要で、多いほど有利である可能性が高い。

というものだった。

現時点では筋力と筋肉量のどちらが寿命に直接影響しているかを示す介入試験は存在しない。
よって因果関係は確定していないが、一貫して長寿のより優れた指標である筋力を優先するのが合理的と考えられる。

とうことで、長寿の観点からは、「筋肥大か筋力か」の答えは「筋力」となりそうだ。

この問いへの最終的な答えを得るためには、筋肉量や筋力と、認知機能やマイオカインといったものと関連についても調査する必要がある。

こちらについては次の記事でまとめる予定である。

参考文献

  1. Newman AB, et al. (2006). Strength, But Not Muscle Mass, Is Associated With Mortality in the Health, Aging and Body Composition Study Cohort. DOI: 10.1093/gerona/61.1.72
  2. Li R, et al. (2018). Associations of Muscle Mass and Strength with All-Cause Mortality among US Older Adults. DOI: 10.1249/MSS.0000000000001448
  3. Zhou HH, et al. (2023). Association of muscle wasting with mortality risk among adults: A systematic review and meta-analysis of prospective studies. DOI: 10.1002/jcsm.13263
  4. Li J, et al. (2025). Low lean mass and all-cause mortality risk in the middle-aged and older population: a dose-response meta-analysis of prospective cohort studies. DOI: 10.3389/fmed.2025.1589888

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