この記事では、運動のメンタルヘルス、心の健康への効果を確認したい。
「運動をすると、気分が良くなる。」
このくらいの認識はある。
しかし、
「その効果はどのくらい続くのか?」
「長期的な効果はあるのか?」
「やりすぎは逆にメンタルに悪いんじゃ?」
といった疑問も湧いてくる。
今回はそこのあたりを調べてみた。
結論から述べると、運動によるメンタル改善は、
- 即時効果の持続はあまり期待できない
- 長期的改善も「限定的」
- 週2~6時間が良い
と効果に関してはやや控えめなものであった。
しかし、それでも私は「運動を続けたい」との思いを強くした。
以下で、運動によるメンタルヘルスへの効果を一過性のものと、持続的なものの2つに分けて確認しつつ、「やり過ぎ」についても確認していこう。
では、一過性の効果から。
一過性の効果
まず、Weinsteinら(2024)によれば、
単回の運動によって、全般的な気分が向上し、不安感や抑うつ症状が改善する
とされる[1]。
その効果の大きさは小~中程度とされており、運動後の気分の良さは科学的に認められているということになる。
気になるのはその持続時間である。
一過性の効果の持続時間
BassoとSuzuki(2017)の既存研究のレビュー[2]によれば、
短時間の運動による、ネガティブな気分を緩和し、ポジティブな気分を高める効果は、運動直後から最大24時間持続するという報告もある
とのことであった。
しかし、若年成人30名を対象に行われたNiemanら(2021)の研究[3]では、
20分間の運動直後に見られた気分へのポジティブな効果は、数時間後には確認できなかった
とされている。
したがって、
運動後に得られるメンタルへのポジティブな効果は、
多少残るとしても数時間後にはその大部分は消えてしまう可能性が高そうである。
個人的な感覚では、
運動直後は非常に気分が良く、その日は基本うっすら気分が良い気がしていたが、多少プラセボも入っているのかもしれない。
それでは、本題とも言える、運動によるメンタルヘルスへの持続的な効果についても確認してみよう。
持続的な効果
まず、メンタルヘルスといえば、のうつ病に関して。
Pearceら(2022)[4]は、
適切な量(8.8 mMET-h/週)運動することで、うつ病の発症リスクが25%下がる
としている。
このメカニズムとしては、
- 脳の神経構造の変化
- ボディイメージなどの自己認識の向上
- 運動を通じた他者との交流
などが挙げられている。
運動による認知症のリスク低減効果なども知られているが、これについては別記事で取り上げたいと思う。
そして、「ウェルビーイング」について。
Marquezら(2020)[5]は、
運動介入(最長1年程度)によって、心理的ウェルビーイングが0.21(標準化平均差)有意に向上した
としている。
心理的ウェルビーイングとは、
- 自律性
- 環境制御
- 個人的成長
- 他社との肯定的な関係
- 人生の目的
- 自己受容
といった要素から構成される「良く生きているか」の指標である。
これが、運動の継続によって、0.21と「小さい」効果ながら向上するのである。
個人的には、
この「良く生きているか」の「小さな差」は人生の「複利」となり、人生をより良いものに変えてくれるのではないかと期待している。
この小さな差を全力で取りに行きたいと思う。
と、ポジティブな効果を確認したところで、過剰な運動による影響も確認しておこう。
「やり過ぎ」はあるのか?
Chekroudら(2018)[6]による、120万人を対象に身体運動とメンタルヘルスの関連を調べた研究によれば、
メンタルヘルスは、週に3~5回、合計2~6時間運動していた群で最も良好であり、運動頻度、運動時間が少なすぎても多すぎても悪化するU字型の相関がみられた
とされている。
ということで、毎日トレーニングを行う走筋道は頻度的には「やり過ぎ」となってしまいそうである。
しかし、公衆衛生ガイドラインでは、「頻度」より「量」が重視されている。
Chekroudらも、高頻度がメンタルヘルスに悪影響を及ぼした要因として、
「強迫的な性格特性などの影響」や「余暇とのバランスの悪化」に加え
「週6時間を超える過剰な運動量の影響」も挙げている。
また、米国の身体活動ガイドライン[7]では、
有酸素運動は「週全体に分散させるべき」としており、1日10,000歩という毎日行うことを想定した運動法も紹介されている。
したがって、「高頻度 = やり過ぎ」と考える必要はないと思われる。
ちなみに、走筋道の運動総量は週4時間程度とスイートスポットのド真ん中を捉えている。
そして、私自身のn=1のデータでは、3か月継続時点でのメンタルは至って良好である。
結語
今回は、運動によるメンタルヘルスへのポジティブな効果について確認してみた。
結論を再度確認しておくと、
- 即時効果の持続はあまり期待できない
- 長期的改善も「限定的」
- 週2~6時間が良い
というものであった。
効果は小さいかもしれないが、適度な運動は人生を確かにより良くする、と言えそうだ。
やはり、運動しないなんてもったいない。
参考文献
- Weinstein, A. A., et al. (2024). Affective responses to acute exercise: A meta-analysis of the potential beneficial effects of a single bout of exercise on general mood, anxiety, and depressive symptoms. DOI: 10.1097/PSY.0000000000001321
- Basso JC & Suzuki WA. (2017). The Effects of Acute Exercise on Mood, Cognition, Neurophysiology, and Neurochemical Pathways: A Review. DOI: 10.3233/BPL-160040
- Nieman T, et al. (2021). Changes in cognitive control and mood across repeated exercise sessions. DOI: 10.1111/aphw.12275
- Pearce M, et al. (2022). Association Between Physical Activity and Risk of Depression: A Systematic Review and Meta-analysis. DOI: 10.1001/jamapsychiatry.2022.0609
- Marquez, D. X., et al. (2020). A systematic review of physical activity and quality of life and well-being. DOI: 10.1093/tbm/ibz198
- Chekroud SR, et al. (2018). Association between physical exercise and mental health in 1·2 million individuals in the USA between 2011 and 2015: a cross-sectional study. DOI: 10.1016/S2215-0366(18)30227-X
- Physical Activity Guidelines for Americans 2nd edition


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