筋肥大と筋力、どちらを優先すべきか?健康目的筋トレの結論「筋力」

筋論

筋トレをしていて、ふと、ある1つの「問い」が生まれた。

「筋トレで目指すべきは、筋肥大か、筋力か
である。

競技目的や、理想の姿を追い求めている人は、すぐに答えが出ることだろう。

しかし、健康目的、となるとどうだろうか?

今回は、
健康目的の筋トレでは、筋肥大と筋力、どちらを優先すべきか?
について調査を行った。

結論を述べておこう。

筋力

であった。

なぜこの結論に至ったのか。

今回は以下の4つの観点から筋肉量と筋力どちらがより重要なのかを論文ベースで調査している。

  1. 長寿
  2. 身体機能
  3. 認知機能
  4. 実行可能性

それでは、順に確認していこう。

長寿:筋力 > 筋肉量

長寿に関しては、やや内容が多かったので別記事にてまとめた。

結論は、

  • 長寿との相関は筋力の方が強い
  • ただし、筋肉も必要で、多いほど有利である可能性が高い

というものであった。

しかし、我々が真に求めるのは単なる寿命ではなく「健康寿命」である。

ということで、次は身体機能。

身体機能:筋力 > 筋肉量

身体機能については、Luntら(2021)[1]の系統的レビューが参考になる。

Luntらは、83件の研究を分析し、高齢者において、筋肉量と筋力が運動アウトカム(移動能力、転倒、バランス、ADL)をどの程度予測できるかを評価した。

その結果は以下であった。

  • 筋力の指標である握力は、移動能力、バランス、ADL(日常生活動作)と強く関連した一方、筋肉量は運動アウトカムとの関連が限定的、あるいは決定的ではなかった
  • 握力と筋肉量のいずれも転倒リスクとの明確な関連は認められなかった

転倒リスクについては両者痛み分けとなったが、それ以外に関しては筋力 > 筋肉量。

中でもADLの低下は、身の回りのことが自分でできなくなることを意味し、健康の観点からは重要である。

続いて、健康寿命のもう1つの柱、認知機能について。

認知機能:筋力 > 筋肉量

まず、分かりやすいのが、Cuiら(2021)[2]の研究である。

Cuiらは、15件のコホート研究、主に55歳以上の計2.7万人以上を対象としたレビュー及びメタ解析を行い以下のような結論を得た。

  • 低握力群は、正常群と比較して認知機能低下リスクが1.99倍、認知症全体のリスクが1.54倍と有意に高かった
  • 複数の論文から、筋肉量単体では、認知機能と有意な関連が認められないと考えられる

筋力が認知機能と強く関連した要因としては、筋力が神経系と密接に関係することなどを挙げている。

同様のことは、より新しいHuangら(2025)[3]の研究でも明らかにされている。

Huangらは31件(メタ解析には27件)の研究、計約54万人を対象とした系統的レビュー及びメタ解析を行い、
低筋力や低身体機能で定義される「サルコペニアの疑い」

それに加え低筋肉量も認める「サルコペニア」
と認知障害の関連を調査した。

その結果、
両者で認知障害との有意な関連を認めたが、「サルコペニアの疑い」群と「サルコペニア」群でリスクは同等であった(調整オッズ比 1.96 対 1.88)。

つまり、低筋肉量の有無は、認知障害のリスクに影響していないと考えられたのである。

以上のことから、認知機能に関しては割と明確に「筋力 > 筋肉量」と言えそうである。

そして最後に、現実問題として重要な「実行可能性」について。

実行可能性:筋力 > 筋肉量

健康目的の筋トレには「制限時間」があるのをご存知だろうか?

Mommaら(2022)[4]は、

  • 筋トレの時間と全死因死亡、心血管疾患、癌についてはJ字型の関連が認められ、週に30~60分で最大の効果が得られたが、週に130~140分を超えるとその効果が消失する

としているのである。

Momma H, et al. (2022). Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies.より引用

高用量の筋トレの影響については、データが不足しており不明確とされていて、このJ字型の関連の原因ははっきりとしないものの、否定するエビデンスもないのが現状である。

ということで、健康目的の筋トレは、週60分程度に収めるのが現状では合理的と思われる。

週60分、である。

そう、非常に短い。

そしてアメリカスポーツ医学会(ACSM)の最新知見[5]によると、
筋肥大 → 週単位の総ボリュームとセット数が重要
筋力向上 → 負荷の重さが重要
とされる。

このため、筋肥大を目的とする筋トレは時間がかかり、週60分ではとても足りなくなる。

一方、筋力向上目的であれば、1セット5回前後で済むので、週60分も現実的となる。

もちろん、継続という観点からも、短時間で済むに越したことはない。

ということで、時間の観点からは、筋力を優先せざるを得ない

怪我の観点からはどうだろうか?

私は高重量の方がもちろん怪我をしやすい、と思っていた。
しかし、中重量であっても疲労によるフォームの崩れなどが故障の要因となることがあり、高重量 = 高怪我リスク、のエビデンスはないようであった。

ということで、実行可能性についても、筋力に軍配が上がる。

補足

ここまでの項目では、すべて筋力が有利であった。

しかし、筋肥大が有利になりそうなものもある。

基礎代謝マイオカインである。

基礎代謝

筋肉が増えると基礎代謝が上がる、というのは良く耳にする。

実際、筋肉1kg増えると、基礎代謝は13kcal/日増えるらしい。

しかし、基礎代謝は高すぎても死亡リスクを高めるとする研究[6]もあり、健康長寿に必ずしもプラスに働くものではないと考えられたので、今回の議論からは外している。

マイオカイン

また、筋肉は「マイオカイン」と呼ばれる物質を分泌する「内分泌器官」としても知られている。

そして、マイオカインには、様々な種類があり、健康長寿にポジティブな効果が知られているものも多い。

しかし、Hahら(2026)[7]によれば、
一部のマイオカイン(骨格筋量を抑制するミオスタチンなど)に関しては、筋肉量と相関があるものの、基本的には、マイオカインの分泌は筋肉量そのものよりも、運動の様式、機械的負荷などの筋肉の「状態」に強く依存する
とのことであり、筋肉が多ければマイオカインも増える、という単純なものではないようであった。

寿命や認知機能といった項目に含まれる部分もあるので、こちらも今回の議論からは外すこととした。

結語

今回は、「健康目的の筋トレでは、筋肥大と筋力向上」どちらを目指すべきか、を明らかにするために、4つの観点で調査を行い、その結果は以下となった。

  1. 長寿:筋力 > 筋肥大
  2. 身体機能:筋力 > 筋肥大
  3. 認知機能:筋力 > 筋肥大
  4. 実行可能性:筋力 > 筋肥大

ということで、結論は、

「筋力」

であった。

しかし、調査の終盤、まさかの伏兵に出くわした。

伏兵の名は、「パワー」。

ん、筋力と違うの?
と最初は思ったが、「パワー = 筋力 × 速さ」であり「瞬発力」に近いようだ。

そして、パワーの方が、筋力よりも死亡リスクの指標として優れる、とする論文[7]などもあるようだ。

今後はそのあたりも含めて、健康目的の最適な筋トレ法を考えていきたい。

筋は筋で奥が深い。深すぎる。

参考文献

  1. Lunt E, et al. (2021). The clinical usefulness of muscle mass and strength measures in older people: a systematic review. DOI: 10.1093/ageing/afaa123
  2. Cui M, et al. (2021). Grip Strength and the Risk of Cognitive Decline and Dementia: A Systematic Review and Meta-Analysis of Longitudinal Cohort Studies. DOI: 10.3389/fnagi.2021.625551
  3. Huang J, et al. (2025). The association of sarcopenia, possible sarcopenia and cognitive impairment: A systematic review and meta-analysis. DOI: 10.1371/journal.pone.0324258
  4. Momma H, et al. (2022). Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. DOI: 10.1136/bjsports-2021-105061
  5. Currier, B. S., et al. (2026). American College of Sports Medicine Position Stand. Resistance Training Prescription for Muscle Function, Hypertrophy, and Physical Performance in Healthy Adults: An Overview of Reviews. DOI:10.1249/MSS.0000000000003897
  6. Ruggiero C, et al. (2008). High Basal Metabolic Rate Is a Risk Factor for Mortality: The Baltimore Longitudinal Study of Aging. DOI: 10.1093/gerona/63.7.698
  7. Araújo CG, et al. (2025). Muscle Power Versus Strength as a Predictor of Mortality in Middle-Aged and Older Men and Women. DOI: 10.1016/j.mayocp.2025.02.015

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